ぞろ。

 まあね。


 って、何が「まあね」なんだ?




 群れが苦手、とは、なんか前にも言うた気ぃする。


 今日も今日とて。




 「俺、テントウムシ、嫌いや。恐い。キモい」というのです。


 生徒がよ。


 何を言うてんねん。

 かわいいやん?

 街育ちなので、あたしは虫が珍しくて、嬉しい。

 まして、テントウムシやん?


 何を軟弱なことを言うてるのか!こいつぁ!





 て、思ってた。


 のよ。


 うん。



 「あ」


 彼が目線を上げて、眉毛をぐぐぐぅ、と寄せた。


 ちらほら、テントウムシが。


 ほれほれ、ヒント出してんから、その問題を続けなさい。


 あたしは机の横のボックスから窓枠に登って、ガムテープでテントウムシを捕獲していった。

 
 すまん、キミらに恨みはないねんけどね。



 1匹、2匹、3匹、よん…



 え?




 ぇ?











 50匹までは数えた、と思う。あとはめんどくさくて、もう。多分最終的には、その倍以上捕獲したものと思われます。


 これは、多い、多すぎにもほ〜ど〜が!

 ある。

 ありすぎ。


 確かに、これだけ多いとキモい。


 うん、


 キモいな。



 ただただ、あたしは無口な狩人のように、捕獲を続けたのでございます。



 ふー。


 さて、続き、続き。あたしは捕獲のためにここに来たわけではないのことよ。





 むげんきゅうちゅうが。ちゅうしょくちゅるとき。


 なんだかつたれて、噛み噛み。

 (訳:無限級数が。収束するとき。と、言いたかったのだが、なんだか疲れたので、どもりまくりなのでございます)


 まあ、でも、本業ではないけども、大量のテントウムシを捕獲し、ガムテープで真空パックする、という大事業を終えたし!



 と、自己満足に浸ろうか、と窓に目をやると。



 まだ、いるよ…。


 休憩のたびに、ごみ箱にはテントウムシのパックが。


 「あ、わからん」



 え、コレ、前にもやったヤツやんけ。


 どうしたんだ!


 「へへい、ベイベー、バッテリーは」


 いつものように、




 オオボケかますんじゃねえよ!と。


 しかりつけ。


 そして窓枠に登り、


 パックして。


 ふぅ、


 と、椅子に座って背もたれにもたれて


 のはずが


 座ったのは


 ファンヒーターだった。


 ので、


 床にドサー。



 頭、ごつーん。



 「…、ティーチャー…。今、ごつい音したで」




 いいの、もうあたしのことはほっといて。


 せんせいはね、このように大の字になって、大自然と一体感を味わっておるだけなのです。

 ああ、天井って、広いなぁ、白いなぁ、って、感慨にふけっているだけなの。そうなのよ、それだけだから、おまえは、今の問題をもっかいやり直せ。



 

 


 鈴鹿八耐よか、ある意味疲れる、「八時間連続で数学と英語にGO!」が終わったとき。


 

 ふらふら。



 「ティーチャー、もひとつ授業があるんやんな?今日」


 …うん。しかもここから80km以上離れたところでね。



 「死ぬなよ」


 ほんまにそう願ってるなら、こんな長時間せんでもええように、普段からちゃんとやっとけ、ダボ。



 とゆー、セリフを呑みこみ、

 
 うんじゃあね、


 と、

 車に乗り込もうとした。



 かがむのが足りなかった。



 おもっきし、デコを車にぶつけた。


 
 「…、今、バキッって、音したで」


 そこで実況するな。はよ部屋戻って、復習しとけ。



 「頭蓋骨、破れてへん?」


 んーと。


 破れてへん。


 でも、ちょっと、とがってきてる、デコが。



 「そのまま、ツノになるとか」


 おまえが、頑張ったら生えてきません。




 と、ツノのモトをさすりさすり、一般道から高速に入る。




 すげー渋滞。


 奇しくも、前ビートル、右マーチ。



 甲虫類の群れ、群れ。




 どこからこんなによさってくるねん(訳:どこから、こんなに寄り集まってくるのであろうか)。


   

 だから、群れってイヤ。




 ケツ痛ぇ。







 ちなみに走行距離は248.7km/1日。


 手のひらも痺れる街角。



 行き3時間かかったのが、帰りは空き空きで、45分。




 
 



 誰もいない道路が好き。



 テントウムシのいない窓枠が、好き。