2006-10-22 あのひにべつにかえりたくない 中学生のとき、クラスメートにとても可愛い女の子がいた。 ちょっとおとなしめで、まっすぐなツヤツヤサラサラヘアが、赤毛のあたしには眩しかった。 彼女は野球好きでドカベンを愛読していたと思う。 ある放課後。 忘れ物をとりに教室に戻ると、彼女が一人学級文庫の整頓をしていた。 清楚な声で高らかに歌いながら。 『せいしゅんってなっんだ〜、あっのきんのったっま〜』 彼女はあたしに気づいてほほえんだ。 『つまり、きんのたまがない私たちには青春はないってことね』 忘れ物がなんやったか、忘れました。