あのひにべつにかえりたくない

中学生のとき、クラスメートにとても可愛い女の子がいた。


ちょっとおとなしめで、まっすぐなツヤツヤサラサラヘアが、赤毛のあたしには眩しかった。











彼女は野球好きでドカベンを愛読していたと思う。




ある放課後。




忘れ物をとりに教室に戻ると、彼女が一人学級文庫の整頓をしていた。



清楚な声で高らかに歌いながら。




『せいしゅんってなっんだ〜、あっのきんのったっま〜』



彼女はあたしに気づいてほほえんだ。




『つまり、きんのたまがない私たちには青春はないってことね』






忘れ物がなんやったか、忘れました。