おーともーびるについて

 あたしの車は今2代目。


 一代目は誰が見てもボロボロで、廃車になった。



 自動車学校でズタボロになった帰り道、そのしょぼい車が納車されたばっかりで、まだ洗車もメンテもされてへんかった。


 あまりにみすぼらしいその姿が、「誰か拾ってください」と、言うとるような気がしたん。これは連れて帰ってやらなあかん気がしたん。それが、その車にとって不幸だったかもしれん。が。

  



 とにかく。免許とったその日から、拙いあたしの運転に満身創痍で付き合ってくれたん。


 そやし、

 部品を総入替えしてでも乗りたいねん。




 て言うたら、修理点検を任せてる工場のマイ師匠が


 「やめとき。ねえさん、もう往生させたりィな」






 
 ある晩のこと。



 徹夜3日目で、頭がパッパラパーになってたんやと思う(いいわけ!)。


 当時の駐車場は隣が一軒家やってんけど、バックして入れる時、ハンドル切るタイミングが早すぎた。



 めきょめききゅめきょきょっ!


 お家の門扉の柱がアメちゃん(関西のおばちゃんのアクセントでね!おばちゃんらは常にアメちゃんを携帯していて、何かあるとすぐに「アンタ、アメちゃんあげよ!」と手渡してくれます。そーゆーわけで、アメちゃん食わへんあたしのバッグにはいつの時代のものやらわからんアメちゃんがごろごろしてます。て、長いよ)のように、ぐにゃ〜とまがっているでわないか!げか!じびいんこうか!


 めっちゃバンパーで柱を曲げてるのことね!


 と、驚きながら、更にアクセルを踏むあとうさんであった(しかも声出して笑ってた。なんでやろ)。




 60度くらい曲がった柱を、手で戻そうとしてみてみてみてみて!ばか!びくとも動くはずがないやんけ。



 さっきまで超眠かったのが、すっかり目がさめました。あと3日は寝ないで済むかと思いました(が、1時間後には熟睡してた)。


 夜も遅かったんで、おじちゃんたちは起きてる気配やってんけど、


 『ごめんなさい。


 犯人は私です。明日、改めてお詫びと修理について伺います。


                               あとう』



 と、手紙を書いて、そおおっとポストに入れた。



 その晩、近所の息子が、「おまえやろ!」「オレとちゃうわ!」と、親に誤解され家を出てけ!など、えらい騒動になってたことも知らんくて、いやほんまにすまん。








 なんかさ。


 動くものに対しては常に反応できてるんやけど、動かない無機質に対しての反応が鈍るときがあるのんよんね。



 電柱とか。段差とか。それで、工場の師匠が出してくれた代車もこすってへこませたよね。2回も。でも、師匠は修理代とってくれなかったよね。ごめんね(て、何年もたってからここで言うてもしゃあないやん)。




 そんなんでべコベコにしても、運転に支障がない限り気にせえへんかってんけど(金がなかったとも言う)。


 オカマも3回くらいほられた。



 信号待ちしてたら、後続車のおばちゃんが携帯かけながらでブレーキが遅れ、やっぱり携帯かけながらのおばちゃんがチャリに乗って間を渡ろうと突っ込んできて、挟まれた。チャリの前輪と後ろの車のバンパーがぐちゃぐちゃだったけど、チャリおば自身は無傷だった。


 後続車のおばちゃんは、


 「なんで、あなた(の車)だけが無傷なの!」って、キレてましたが、あたしが無傷やなかったら、アンタが更に大変やっちゅうことですよ?わかっとる?



 などの苦労をともにしたが、



 点検時期が来てたのに、ちょっと忙しくて、2日間で900キロ程走ったら、ラジエーターから煙出た。



 もう、あの車種はほぼ国内では走ってないらしい。



 合掌。



 今も車体の一部をもらって飾っとります。



 と、思い出を語ってみました。



 そんで、今の2代目。



 コイツは、そんなに古くないし、似たような感じの外見の車はごろごろしとるし(しかし、運転しとるのは大概おっさんだ)、一代目ほどイキモノ扱いはしてへん。



 内部の模様がちょびっとイヤかなあ。もう慣れたけど。飛行機とか新幹線とかのシートとかカーテンて、なんであんな変な模様がついてんの?黒マジックで塗りつぶしたらあかんの?



 すると、中古屋のディーラーのあんちゃんが、


 「ねえさん…、ほんまに塗ったらしばくよ。あかんよ」





 と、2回も電話かけてきやがって、工場の師匠にも言いつけたので、1週間くらい言われた。わかった。塗りません。


 

 「わー、前のと比べたら高級そうやーん!」



 と、おおむね好評ではある。



 が、親父を乗せたったら。


 「なんや、コレ。安モンやな」



 と、言いやがった。


 
 「自動ドアもついてへんのか」





 タクシーちゃう、ちゅうに。



 「ちょっとお金出したるから、もっと高級なんにせえ」(だから自動ドア付きは無理やって!)



 親父からこづかいもらうなんて20年ぶりくらいかなあ。あてにしてへんけど。つうか、そんなに持ってへんのも知ってるけど。まあ、試しに


 いくらくらい出してくれるの?


 と、聞いてみた。




 「五万円くらいでなんとかなるか」(いつの時代やねん。そういえば高校生のときノート120円を買うてたら「贅沢や!120円もあったらノートなんか1ダースは買えるはずや!」とか言うとったなー)












 聞いたあたしがバカでした。はい、はい、あたしはバカでーす。


 

 そのお金でオヤツでも買うときなさい。