やきそば

ほんまに焼いてるんも、お湯入れて焼かないんも、好きやで。



ビール飲むよーになってから、さっぱり飲まんくなったけど、油っこいもんにはコーラて合うて思う。


むかし、ちゃうとこで書いたけど、もいちど書く。



焼きそばには軽いトラウマみたいな、まあそうでもないかな、いやそうかもしれへん、みたいな。




昔。



或、男の子がいた。


仮にA君としとこか。



A君(人類。性別:男)は二十代の時の知人。



彼は、長身のさわやかな、しかも普段はごっつ気ぃ遣いの、優しい男の子やったん。



それが、酒が入るともうアンタ、なんか違うイキモンになるんや、これが。



とにかく哺乳類であれば(機会がなくて、爬虫類や両生類、昆虫その他は未確認)、口がついとれば、



手当たり次第に、



キスをする。




ヒトだろうが、ネコだろうが、イヌだろうが。




一度なんか、


「Aがいない!」と、捜索に出たところ、




よその宴会の、きったないリーマンのおっさんを押し倒してのブチューの最中で。




おっさん、ウットリしとる場合ちゃうちゃう。


A君は口から何から何まで体中ガムテぐるぐる巻きで、ご退場。



そんなご乱行も、彼が美形であるが故、かなり大目に見られてたんとちゃうかなあ。出入り禁止なんてほぼなかったし。






「今日はA君は来てないの?」て、寂しそうな飲み屋のおっさんとか、A君の虜は多かったように思う。



A君が片思いしてた女の子だけは、キスされてへんかったのも、わかりやすいっちゃわかりやすい。



んで。



ある時、用事がたてこんでて、途中から参加した飲み会。



料理はほとんどなくなってて、


空きっ腹のあたしがようやくかき集めた焼きそばをほおばってたとき。



不穏な気配が。




とか思う間もなく。


あたしは頭を抱え込まれて、



口の中の焼きそば全てをすすり出されてしまった。





ちょっと!




それが最後の焼きそばなのに!




もうあとはパセリしかないのに!




空腹をパセリと絞りかすのレモンで満たした悲しさを、あたしは今でも忘れられません。






そういうわけで、




焼きそばは一人で、誰もいないところで食べたい。




他の人がいたら安心して食べられなくなりました。




そういうタベモノ。