ふぃーるどおぶ
夏になるとね、海でよく遊んだわ。もう、真っ黒なんてもんじゃない。ゴボウみたいだったわぁ。
口の中もしょっぱくなって、体中塩で真っ白になって。
喉が乾くとね、
畑に入って行ってね、
表面が手で触ると火傷しそうなくらいの、
煮えたような西瓜をね、
割って、かじってた。
周りに店なんてなくて。
野菜も魚も、そこらへんから自分達でとってきたものでしょう。
そんな生活がイヤでね、
買い物をするのが、憧れだったのよ。
こんな田舎、出て行きたくて出ていきたくて、もう、しょうがなかった。
だけどねぇ。
今思うとねー。
故郷に帰っても、
すっかり変わってしまって。
あの頃の風景や、生活は、
今では、どうやっても
手には入らないのね。
そう言って笑う人の心の中にある風景を
あたしも、見たいと思った。
そういう宝物を、宝物として、抱いている、
その人が
あたしは好きなん。