めはくちほどにもないやつ

 昨日、突然知らない隣のテーブルから、


 「肉まん余ってるけど、よかったらどうぞ」



 え?とか思いながら、ハイって食べてしまった。











 なんで?









 なんでですか?








 メトロポリタンミュージアムのクロークで、係のおっさんが


 「ワタシハァ、アヤスゥトォモオオシイイマスウウウ」とイキナリ言うんで、ああ、アヤスて名前なんかーと、ええ名前やねえと、てきとーな返事をしたら、なんべんも同じ事を言うてくるんで、???


 結局彼は


 「ワタシはアナタを愛してます」と言いたかったのだ。


 発音悪すぎ!


 で、紙に

 「WA・TA・SHI、WA、A・NA・TA・O、A・I・SHI・TE・I・MA・SU」と書いて、出来るまで発音させた(なんでこんなところに来てまで)。



 そしたら、他の職員のおっさん達もワラワラ集まってきて


 「『君は美しい』はどう言うのか」など口々に聞いてくるので、なんだか変なことになったなあ、と思った(し、後で友達に言うたら、それで日本女性がひっかけられたらどうする!と怒られた。いいじゃん、そんなんでひっかかるヤツぁ、アヤストモウシマスでもひっかかるんだよ!)。



 そしたら、帰りに上着を返してもらうときに、馬鹿でかいチョコレートの詰め合わせの箱をくれた。




 その辺りで、なんだか、あたしは食べ物をもらうウンなんかな、と思った。ような気がする。


 その後も、サンフランシスコの公園で親子がなんか食べてて、なんやろアレ?とつい凝視してたら、男の子が袋ごとくれた。あたし、目ぇで脅してたんやろか。ちなみに歯が抜けそうに甘いチョコファッジどした。


 まあ、合衆国内などでは、知らない人からの食べ物は睡眠薬入りなどが多いので、もらわないようにね、ほんとはね。



 


 まあ、毒入ってない限り食うけどなあ。







 二十歳くらいのとき、仕送りもバイト代も底を尽き(良くあった)、米も尽きて、フラフラしてたとき、学校の男子が


 「じゃあ、学食で奢ってやるよ。パチンコで儲かったからいくらでも食いな」



 おお!



 で、月見そばとー、キツネうどんとー、親子丼とー、カツ丼とー、えーとえーと、あともう一品頼んだ気ぃするけど、覚えてない。



 ワシワシ食らってたら、途中で


 「あのさー良かったら俺と付き合わない?」



 え。




 …、ここで断ったら、一食一飯(正しくは一宿一飯だが、空腹のため思考が正しく作動してません)の恩義に反するのだろうか。とか、ワケわからなくなり(若気の至り)、


 ウン。と言ってしまった。



 学食ごときで、あたしは身を売るんか…。




 まあ、しかし、食ってしまったものはしょうがないかなあ。コレも縁。きっと縁。うんうん。



 しかし、



 彼は、最後のドンブリを平らげるあたしに、



 「…、あー、ゴメン、さっきのやっぱりナシ」




 理由は



 「さっきまで、あとうを女って思ってみてたんだけどさー、そうじゃなくて、『アトウ』って種類の生き物って感じがしたんだよねー」




 

 その後、彼は彼と同じ種類の生き物の彼女も出来たが、たまに実家から送られた米やインスタントラーメンや缶詰を分けてくれるようになった。




 餌付け?







 そうか、あたしは餌付けしたくなるふぇろもんを撒いておるのか!





 そうか、ナットクした!




 ナットクしたからどうなんだよ!?




 ごめん、わかりません!