because you
だってあなたが。
ダンボール入りの肉まん、食ってみたかった。
アイスクリームなんかに入ってる安定剤はセルロースだったりするし。
アイデアそのものは悪くなかったんやけどね。惜しい。
昔ある女がいた。
戦前の非常に貧しい村に生まれた。
貧乏の子沢山の家。
夜、寝床に入ると、皆が息を殺している。
釜の底に残った飯粒を
なんとかして、
食べたい。
だから、
他の兄弟達が眠ってしまうのをひたすら待っている。
その女も器量は良かったけれど、姉妹の中に飛び抜けた子がいて。
子に恵まれない裕福な夫婦に見初められて養女に行った。
そして、自分はそのうちに下働きの奉公に出された。
血のつながった妹を『お嬢様』と呼び、奉公仲間からは、お前は姉だから陰で優遇されているのだろうと、食事は捨てられ衣服は泥水の中に。
逃げ出して。
幸福でない結婚をして。
そこからも逃げ出して。
ある男に出逢った。
お願いだから。
私を囲ってくれ。
女の願いは聞き届けられた。
男の娘は、
妾なんて不潔だ。
それくらいなら結婚しろ。
と、少女らしいズレた潔癖な考えで。
連れ子にも会社などが与えられ。
それでも女は安寧を得られず。
男が病床に臥した間に財産の操作に手を着けた。
不安で不安で。
実子の財産まで取り上げた。
男の葬式の時。
義理の娘に
仮にも喪主なのだから、せめて指輪は一つにしろ、とたしなめられた。
自分自身が病に倒れたとき、
一番お気に入りの指輪だけは身に着けていたのを
『死んでしまってからではどさくさで誰かにとられてしまうかも知れない。今のうちに抜いて持って帰ろうよ』
枕元で子供夫婦の会話。
死ぬ前に一度だけでいいから、義理の娘と、普通に会話というものがしてみたい。
手に入れた数十億という金は実子達が数年で食いつぶし。
義理の娘は
最期の願いを叶えてやれば良かった、
と泣く。
奇妙だが、これも愛情の一つなんやろう。
愚かかも知れない。
でも。
誰もがきっと。